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30日目!後編 日露戦争奇譚 -カジュラホ- [インド旅行記-カジュラホ-]

日露戦争.jpg
《日露戦争風刺画》

ヤージはゆっくりと言葉を選ぶように声を発した。

「ワシの祖父から聞いた話だ。
ワシらの一族は代々軍人であってな。
ああ・・・祖父はワシにとって厳しく恐ろしい存在だった。
子供の頃いつもワシは叱られていた。」

ヤージは遠い目をしながら語り続ける。

「そんな祖父が若い頃、報せが届いた。
お前たちの祖国・・・ロシアと日本が戦争を始めたぞと。
当時は日本なぞ、だれも知らなくて、
東洋の小さな国が滅びを選んだろうなと噂し合っていたらしい。」

ヤージは穏やかな口調で話を続ける。

「だが、それは違った。耳に入ってくるのは日本が勝っているらしいという情報だった。
みんなは本当なのか?冗談だろう?とそのニュースをサカナに語り明かしたそうだ。」

「だが、祖父は軍からの情報で
ロシアの大艦隊がインド洋にいることを知ったらしく、
これで日本は終わったなと思ったそうだ。
初戦でも勝ったのが奇跡で、もとより白人国家に勝てるわけがないではないかとな。」

対馬沖海戦.jpg
The Battle of Tsushima

「ある日、戦争が終わったという報せが届いた。
しかも、それは日本が勝利した。という信じらぬ報せだった。」

「祖父は狂喜した。皆も狂喜した。
白人の、しかも強国ロシアに勝った。
見知らぬアジアの小国が勝った。
それはもうお祭り騒ぎで、まるでワシらが勝ったような興奮につつまれていた。」

まるで経験をしたことのように、だが静かに彼は話を続けた。

「祖父はよくこの話をワシにしてくれた。
東洋の小国が奇跡を起こしたのに、ワシらにできぬはずはないと。」

「ワシはいつもは恐ろしい祖父が笑顔で語るこの話が大好きだった。
祖父にとってもワシにとっても、あれは奇跡だったのだ。」

黙々と語る、ヤージの目は静かな興奮に包まれていた。

「ところでワシには疑問がある。」

「どうやって日本はあんな大艦隊をやっつけたんだ?
祖父は奇跡だとだけいい、その理由がわからなかったらしい。
だから、お前たちの意見が聞きたい。」


ミハイルは口を開いた。

「日本海軍は恐ろしく強く勇敢だったんだ。ただの小国ではないよ。
それに比べてロシア海軍は・・・。」

少し寂しそうだ。

オレは昔読んだ本を思い返し、
それは少しばかりの話を紡ぐことにした。

確かに日本海軍は強かったかもしれない。
でも、ロシア艦隊は黒海から日本までを航海するという大冒険をして、
たどり着いた船は満身創痍だった。
それでも戦いを選んだロシア海軍はとても勇敢だったと思うよ。


見舞い.jpg
〈がんばったじゃんと、ロシア提督を褒める東郷平八郎〉

ミハイルの顔が少し嬉しそうになる。


次はヤージだな・・・オレはヤージに向き直り
もっと言うとインドがなければあの戦争は勝てなかったかもしないよ?と語った。

「どういうことだ?」ヤージは先を促すように身を乗り出す。

ロシア艦隊が満身創痍だったのは
インドに寄港することができなかったことも大きな要因だと思う。
もちろん、それはイギリスの思惑だったとは言え・・・
インドがそれに協力しなかったら、また違う結果になった・・・かもしれないよ。

「おお・・・おお・・・」と言葉を失ったように老人はうめき声を発する。

質問に答えられた自信はないが、
この老人の中に新たな物語が出来たのかもしれない。

そしてそれを、孫たちに語るのかもしれない。
ヤージの祖父と同じように、恐ろしい顔を綻ばせながら。

そう思うとオレはなんだか心地よい気持ちになった。

ミハイルを見ると、彼も嬉しそうにヤージを見つめている。

こういうのもいいな。

オレは言葉を返すことが出来なくなった老人に
そういえばヤージさんも軍人だったの?と水を向けた。

すると、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりにヤージは
「そういえば面白い話があってな・・・」と話をまた紡ぎだす。


ふと横を見ると女性たちはサンディとコレどうやって作るの?と
今日の料理の話に花を咲かせていた。

オレたちの話はまったく興味のない話なんだろうなと苦笑し、
ヤージとミハイルに向き直り、またヤージのパキスタン戦争の話に花を咲かせた。


長く楽しい会話の後、
ホテルに戻ったオレは、腹も胸もいっぱいのままベッドに潜り込む。



そして朝を迎え、いつものようにカフェに向かおうとすると
カウンターで若いホテルマンに呼び止められた。

どうしたの?俺が尋ねると
彼は「あの・・・今日の早朝ロシア人が旅立ちまして・・・」と答える。

「あと、コレを貴方に渡して欲しいと・・・」

彼は一枚の絵を取り出した。
「楽しい夜だったそうです。」

オレはいつも貰いっぱなしだな・・・

ホテルマンから絵を受け取ると反射的に、ありがとうとつぶやいていた。
誰に言ったのかはオレ自身にもわからなかった。


IMG_6240.JPG
《To Nobita from Anya and Mike. Enjoy!》
*脚注 くっ・・・西洋人のようにこういうクールなマネがしたいです・・・


*脚注 私の拙い英語力でここまで日露戦争を語れたのは、留学中に戦争好きの先生とよく討論をしていたからです。
自国の歴史を語れると相手の教養しだいではおもしろい展開が作れます。




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